秋田の酒大百科


2021.07.21

秋田の酒米の秘密

酒米(酒造好適米)とは

酒造りには、“あきたこまち”や“めんこいな”など、飯米として一般に食されているうるち米が使われますが、吟醸酒などの高級酒には、酒米といわれる“美山錦”“秋田酒こまち”“山田錦”など、大粒で心白(米粒の中央部にある円形または楕円形の白色透明部分)を持った軟質米が使用されます。 玄米の表層や胚芽部分には、タンパク質や脂肪分が多く含まれるため、酒質に雑味を与えてしまいます。このため、醸造用堅型精米機で30~35%を削り取って余分な成分を除去し、精米歩合70~65%白米にします。吟醸酒等では更に磨き、精米歩合50~40%前後の白米にします。 精米された米は、枯らし期間をおいた後、洗米して糠を洗い流します。さらに、数時間浸漬され甑(こしき)、または連続蒸米機によって蒸され、できた蒸米は放冷機等により冷却され、次の工程に進みます。

酒造業に適した米産地「米の秋田は酒の国」

「米の秋田は酒のくに」のキャッチフレーズのとおり、秋田県は気候的にも米作に適した地域で、良質な穀倉庫として全国的に有名です。清酒出荷量、酒米生産量はともに全国上位であり、その要因としては、雄物川、米代川、子吉川といった一級河川が豊かな水利としてほぼ全域の耕地を潤していること、米の新品種開発等研究の取り組みがさかんなことなどがあげられます。
「あきたこまち」は飯米として有名ですが、酒造りに適した米、酒造好適米(酒米)も「美山錦」「吟の精」が県内で広く栽培されてきました。各地域の研究会では栽培適地を厳選、さらに品質の安定をめざして契約栽培を実施するなど、栽培から出荷まで一貫した体制で良質の酒米を生産しています。豊富で良質な「秋田米」を贅沢に使用し、丁寧に磨き上げ、育むからこそ秋田の酒ならではの豊かできめ細かい味わいを生み出せるのです。

秋田オリジナルの酒米「秋田酒こまち」

秋田県では、昭和63年から始まった酒造好適米新品種開発事業において、平成10年、秋田県オリジナル品種「秋田酒こまち」の開発に成功しました。これは、酒造好適米として最高品質を誇る「山田錦」(兵庫県)並みの醸造特性と、県内酒造好適米の主力品種「美山錦」並みの栽培特性を併せ持つ、吟醸酒用の原料米として育成された品種です。 大粒である「秋田酒こまち」は、高精白が可能で、蒸米に弾力があり表面が乾きにくいことから麹がつくりやすいというのが大きな特徴です。また、酒母・もろみは糖分の製成量が多くなるという傾向があり、造られたお酒は“香り高く、上品な甘みがあり、旨さと軽快な後味を持つ日本酒”といえます。たんぱく質が少ないことに加えて、でんぷん質が消化しやすい性質を持つため、雑味が少なく“上品な旨さ”になりやすいと同時に、飲んだときに口の中でふんわりと広がる感じが“軽快な後味”を創出し、その味わいはたいへんご好評をいただいております。

新酒造好適米「一穂積」と「百田」

「秋田酒こまち」がデビューしてから17年、2020年に県と業界が連携して開発した新規酒造好適米の「一穂積」と「百田」がデビューしました。2品種は、いままで秋田県にはなかった酒質が期待できる品種です。

【すっきり系の一穂積】

2001年交配。系譜には日本海側の酒米の品種が並んでおり、様々な特徴を受け継いでいるようです。味わいのベースは五百万石のキレイで淡麗なタイプですが、後味がひかえめで様々にふくらみます。タンパク質は秋田酒こまち並みに低く、素直で酵母の特徴を引き立ててくれます。
田んぼではしなやかな立ち姿で、長くすらっとした稲穂が特徴的です。玄米は心白がほどよく入り、色白です。

◎系譜/
新潟酒72号(越淡麗)×秋田酒こまち
◎品種登録出願/
2017年
【ふくらみ系の百田】

2010年交配。本品種は両親とも母親に山田錦を持つ秋田県産の酒米で、吟醸酒は香味とも華やかでいままでは出せなかった「後味のふくらみ」が特徴です。またタンパク質も低く、雑味も出にくくなっています。純米大吟醸酒、大吟醸酒を中心に鑑評会などでの活躍も期待されます。
田んぼでは、短めの稲穂が数多く揺れる、酒米としては珍しい姿をしています。玄米は少し細身で色白です。

◎系譜/
秋系酒718×美郷錦
◎品種登録出願/
2018年